RBP(RNA Binding Protein)関連 RIP-Assay Kit
- RIPとはどのような実験方法ですか?
- RIP工程で得られるサンプルの特徴を教えてください。
- RIP工程で得られたサンプルの解析法にはどういったものがありますか?
- 自家製抗体を用いたRIPアッセイはできますか?
- Tag抗体を用いたRIPアッセイはできますか?
- 核内のRBPクラスタを分離できますか?
- RIP-Assay Kitは核内のRNAには不向きとのことですが、解決法はありませんか?
- RIP-Assay Kitを使用する際、必要なサンプル量はどの程度ですか?
- 磁気ビーズを使用したいのですが、可能ですか?
- RIP-Assay Kitに使えるビーズで、おすすめや注意すべきことはありますか?
- Cross-linkingなどの手法に対応していますか?
- クロスリンクをおこなわず、Protease inhibitorの添加のみでRNAは安定化しますか?
- (ホルマリン)クロスリンクしてもRIP抗体で抽出できますか?
- RIP-Assay KitとRIP-Assay Kit for microRNAの違いは何ですか?
- RT-PCRによって目的の配列を増やす場合、RNA精製後の逆転写は、どのRNA濃度を基準に行えばよいですか?
- マイクロアレイ解析の際には、規定量のmRNAを必要としますが、negative controlの沈降サンプルではどのようにして必要量を集めているのでしょうか?
- 組織サンプル(肝臓)での使用は可能ですか?
- RIPとはどのような実験方法ですか?
RBP(RNA Binding Protein)を、RBPに対する特異抗体にて免疫沈降を行うことで回収し、RBPに結合するRNAを解析するための方法です。 - RIP工程で得られるサンプルの特徴を教えてください。
「RBPと結合しているRNA」更には「目的RBPと複合体を形成している他のRBPと結合しているRNA」が濃縮されていると考えられます。 Total RNAでは数%程度だったmRNA(とmiRNA)が、RIPサンプル後ではrRNA, tRNAに比べて濃縮されます。また、数万種類あったmRNAが絞りこまれているため、解析が容易で、かつ関連性(挙動を共にする、同じ制御下にあるなど)を見出しやすいと言えます。 - RIP工程で得られたサンプルの解析法にはどういったものがありますか?
【定量】
・UV吸光度(A260 nm)による定量。(MBLではNanoDrop を使用しています)
感度の問題から、薄い場合には定量できません。
【定性】
・アジレント バイオアナライザによる波形の分析
→ 高感度にRIPサンプル中の核酸のサイズ分布を検出できます。(キャピラリ電気泳動)
・シークエンシングによる配列決定(古典的シークエンシング)
→ RBPに結合するRNAの塩基配列が分かります。(RBPの標的RNAの特定)
・RT-PCR/定量的RCR解析
→ 特異的に検出・半定量できます。
・マイクロアレイ解析
→ 数万種類のmRNAから絞り込みが可能です。
・HTSシークエンシング
→ RBPに結合するRNAの塩基配列が決定できます。 - 自家製抗体を用いたRIPアッセイはできますか?
RNPの免疫沈降能は抗体によって異なります。また、精製抗体が望ましく、至適Buffer条件については十分な検討が必要です。(high salt solutionの添加の有無など) 弊社のこれまでの検討では、IPによってRBPの沈降が確認されても、RNAが共沈してこない場合もありました。したがって、BioanalyzerおよびNanodropでRNAが回収されていることを確認することをお勧めします。 - Tag抗体を用いたRIPアッセイはできますか?
MBLの抗Myc-tag抗体(code. M047-3(clone: PL14))がRIPに使用できることを確認しています。他の抗体に関しては未検討です。 - 核内のRBPクラスタを分離できますか?
RIP-Assay Kitは「細胞質内のRNP」の解析を目的としています。
RIP-Assay Kitのバッファー条件は細胞質・膜画分調整法をベースに開発されているため、細胞核はほとんど破壊されず、したがって核内のRNPの回収はほとんどできません。 - RIP-Assay Kitは核内のRNAには不向きとのことですが、解決法はありませんか?
クロスリンクをおこなわない場合には、 「RiboTrap Kit」と「RIP-Assay Kit for microRNA」の2つを使用することをご提案します。 RiboTrap Kitでは核画分と細胞質画分を分けて調製することができますので、まず、RiboTrap Kitのバッファーで核のlysateを調製します。このとき、RNAの断片化については考慮する必要があります。続いてRIP-Assay Kitを用いてRIPを行ってRNAを抽出します。 RNAが分解してもRBPとの結合サイトだけは保護されているという観点では、CLIP(UVクロスリンク→IP)があります。 - RIP-Assay Kitを使用する際、必要なサンプル量はどの程度ですか?
細胞の種類によって異なりますが、4×106-2×107個の細胞を準備してください。はじめは、目安として1×107cells/sampleでの検討をお勧めします。 - 磁気ビーズを使用したいのですが、可能ですか?
Protein AおよびProtein Gについては、Dynabeads® (Invitrogen)がご利用できます。Protein G-Magnetic Beads (MBL; code. MJS002V2)もご使用になれます。 - RIP-Assay Kitに使えるビーズで、おすすめや注意すべきことはありますか?
アガロースビーズを使用する場合、架橋の程度(強さ)によりバックグラウンドが高くなる場合があります。
Protein A (or G) Sepharose CL-4B (GE Healthcare)
Immobilized Protein G Plus (Pierce; code. 22852)
などをおすすめしています。 - Cross-linkingなどの手法に対応していますか?
現在のRIP-Assay KitはUVなどのクロスリンク手法に対応していません。ユーザー様によるプロトコル改変をご検討頂く必要があります。 - クロスリンクをおこなわず、Protease inhibitorの添加のみでRNAは安定化しますか?
protease inhibitorの添加は、RBPや抗体の分解を防ぐことを目的としており、RNA-RBPの結合の安定化への効果は少ないと考えられます。RBPとの結合力が弱いRNAを回収したい場合はクロスリンクが必要となります。 - (ホルマリン)クロスリンクしてもRIP抗体で抽出できますか?
ホルマリンでのクロスリンクは検討しておりません。 ホルマリンでは核酸とタンパク質だけでなく、タンパク質同士も架橋されます。したがって、クロスリンク検討を実施するにあたり、ホルマリンはあまり適さないと判断しています。 - RIP-Assay KitとRIP-Assay Kit for microRNAの違いは何ですか?
RIP-Assay Kitではsmall RNAを回収できません。 RIP-Assay Kit for microRNAはsmall RNAとlarge RNAの両方を回収することができます。さらに、small RNA と large RNA を別々もしくはsmall RNAだけを回収することもできます。RBP/large RNAに結合するsmall RNAを回収することで、対象とする細胞内イベントがRBPだけでなくsmall RNAによってどのように調節されているかも調べられます。さらに、miRNAのターゲット同定にも有用です。 - RT-PCRによって目的の配列を増やす場合、RNA精製後の逆転写は、どのRNA濃度を基準に行えばよいですか?
RT-PCRでnegative controlと目的のRNAを比較する場合、RIPしたときの状態を反映させます。すなわち、目的RBPに対するRIPで得られたRNAの濃度をもとにして、negative controlと目的RNAの逆転写に用いるRNA溶液の添加量を揃えます。
【例】
サンプルとして下記3種類がある場合、
(1)control IgG、(濃度:2 ng/μL)
(2)RBP-RIP RNA、(濃度:20 ng/μL)
(3)Total RNA、(濃度:100 ng/μL)
逆転写へ持ち込むRNAのtemplate量は →(2)と(3)のRNA量を揃えます。
(1)と(2)の比較を行う場合には、control IgGとRBP-RIP RNAのRNA量ではなく、「volume ratio」をあわせる必要があります。 したがって、
→(1)と(2)のvolume量を揃えます。 - マイクロアレイ解析の際には、規定量のmRNAを必要としますが、negative controlの沈降サンプルではどのようにして必要量を集めているのでしょうか?
マイクロアレイ解析では、比較するRNAサンプルの発現パターンがほとんど同じであり、ごく一部のpopulationのみが変化していることから、標準化による解析が可能とされています。一方、RIP解析において標的RBPのRIPサンプルに対して、"negative control"や、"異なるRBPのRIPサンプル"とを比較することは、「RNA発現分布がほとんど同じである」という条件から外れるため、比較対象としては不向きと言えます。 - 組織サンプル(肝臓)での使用は可能ですか?
可能です。