抗体作製サービス
当社では、ファージディスプレイ法による抗体医薬開発を推奨しておりますが、ハイブリドーマ法やシングルBセルクローニング法による抗体作製もご選択いただけます。
ハイブリドーマ法
一般的なモノクローナル抗体作製方法です。
抗体を産生しているB細胞と不死化したがん細胞(ミエローマ)を人工的に融合させ、特定の抗体遺伝子を維持しながら半永久的に生存できる融合細胞(ハイブリドーマ)を作製します。
このハイブリドーマの中から、結合親和性や特異性に優れた有用なモノクローナル抗体を産生する細胞を選択します。
ハイブリドーマ法の特徴
ハイブリドーマは、生体内で産生されたB細胞由来の抗体遺伝子がそのまま維持され、半永久的に生存できる融合細胞です。ハイブリドーマからはIgGやIgMが産生され、スクリーニングの早い段階でセルベースアッセイなどの機能アッセイを実施したり、効率的にサンドイッチELISAなどの測定系を構築したりすることが可能です。
当社では、1980年代からハイブリドーマ法によりモノクローナル抗体の開発を始め、現在当社が販売しているモノクローナル抗体製品の90%以上がハイブリドーマ法で取得した抗体です。
ハイブリドーマ法 対象動物種
マウス、ラット、完全ヒト抗体産生マウス(TC-mAb™マウス)
ファージディスプレイ法
当社のファージディスプレイ法は繊維状大腸菌ファージに抗体(scFv型、Fab型)を提示させ、目的の分子(抗原)に結合する抗体を取得する方法です。この方法は、膨大な種類の抗体を含んだ抗体ライブラリーが構築できるため、非常に希少で結合力の高い抗体を、迅速かつ効率的に取得できます。
- 親和性、特異性が高い抗体の取得が可能!
- 抗イディオタイプ抗体、一点変異抗体、複数膜貫通型タンパク質抗体等の取得実績!
- 日本国内で実施し、柔軟な対応が可能!
ファージディスプレイ技術によるウサギモノクローナル抗体作製の流れとメリット
ファージディスプレイ技術によるウサギモノクローナル抗体作製受託工程
ファージディスプレイ法による抗体多様性の保持
ハイブリドーマ法では、モノクローナル抗体の作製に繁用されているマウスであっても脾臓やリンパ節から単離したB細胞と融合パートナー細胞との融合率は0.001%以下であり、これは1個体のB細胞のうち評価している細胞はたった数百クローンに過ぎないことを意味します。一方、ファージディスプレイ法では、脾臓やリンパ節などから単離したB細胞の多様性を保持した抗体ライブラリーを遺伝子工学的に作製することができ、このライブラリーを使用して抗体をスクリーニングするため、生体内で成熟した抗体を取りこぼすことなく評価することができます。
ファージとは、特定の細菌に感染するウイルスのことです。抗体ファージは、繊維状大腸菌ファージ上に抗原結合能を持った抗体断片(scFv型、 Fab型)を提示し、ファージ内には、提示された抗体の遺伝子が含まれます。様々な分子に対して結合する抗体ファージ集団から目的の分子(抗原)に対する特異抗体ファージを選択することにより、その抗体遺伝子も同時に取得することができます。また、取得した抗体遺伝子から、抗体断片(scFv、Fab型抗体)、IgG タンパク質等を作製することができます。
完全ヒト抗体産生マウス(TC-mAb™マウス)
免疫原性の低減や治療効果の向上のため、ヒト抗体やヒト化抗体の作製は、医薬品開発における重要な技術となっております。ヒト抗体作製において、トランスジェニックマウスを⽤いた免疫法は、動物の体内で⾃然な形で親和性の⾼い重鎖と軽鎖のペアを作製できるという利点があります。
TC-mAb™マウスは、Trans Chromosomics社が抗体医薬の迅速な開発のためのツールとして開発したトランスクロモソミックマウス(人工染色体などの外来の染色体を導入することによって作製したマウス)です。独⾃の⼈⼯染⾊体ベクターを⽤いて、ヒト抗体遺伝⼦の可変領域と定常領域を完全⻑で導⼊しているため、ヒト由来の多様な抗体レパートリーを保有しています。TC-mAb™マウスを用いた抗体開発により、既存の治療薬と⽐較して同等以上のアフィニティを有するヒトモノクローナル抗体が複数得られております。
当社では、TC-mAb™マウスを用いた抗原特異的なヒト抗体の取得サービスを提供しています。抗原を免疫した TC-mAb™マウスから採取したB細胞から、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ法、シングルBセルクローニング法によりヒト抗体の取得を行います。
アルパカVHH抗体
当社では、マウス、ウサギ、ニワトリ、ヒトなどを中心に様々な動物種のモノクローナル抗体の作製実績がございます。その中でも、ラクダやアルパカなどから取得可能なVHH抗体は、IgG抗体と異なる様々な特徴から、以前より世界中の企業や研究施設で研究開発の対象となっております。近年、複数のVHH抗体が治療薬として上市されたことから、更なる注目を集めています。
VHH抗体は、ラクダやアルパカなどが有する重鎖抗体※の抗原結合ドメインを指します。VHH抗体の主な特徴として、15 kDa以下の低分子抗体であることが挙げられ、その他にも様々な特徴を有しています。
※重鎖抗体…最初の定常領域(CH1)が欠損している2本の重鎖のみから構成される抗体。
VHH抗体の特徴
- 高い構造安定性を有するシングルドメイン抗体
- 修飾、改変が容易
- ユニークな抗原エピトープを認識
- 様々な発現システム(哺乳動物細胞、大腸菌など)による生産が可能
ファージディスプレイ法&次世代シークエンス解析
当社のファージディスプレイ法では、次世代シークエンス(NGS:Next Generation Sequencing)解析を組み合わせた、抗原特異的な抗体の取得サービスを提供しています。はじめに、免疫動物から取得したB細胞から抗体ファージライブラリーを作製します。この抗体ファージライブラリーから標的抗原を用いてスクリーニングを行い、抗原特異的な抗体群の遺伝子を取得します。取得した抗体遺伝子のNGS解析を行い、MBL独自のアルゴリズムにより、候補となる抗体クローンを選択します。更に、選択した抗体配列をもとに、候補抗体を発現し、評価することも可能です。
NGS解析を組み合わせたファージディスプレイ法では、ファージディスプレイ法を用いたスクリーニングによって選択された抗体群の遺伝子情報を網羅的に解析することができるため、抗原特異的な抗体群に存在する僅かな候補抗体クローンを同定することが可能となり、抗pMHC抗体などの希少な抗体クローンが取得できます。
ファージディスプレイ法 対象動物種
ウサギ、マウス、ラット、ニワトリ、完全ヒト抗体産生マウス(TC-mAb™マウス)、アルパカ、その他ご相談に応じます。
(ファージディスプレイ法&NGS解析は、主にマウスを対象としていますが、その他ご相談に応じます。)
シングルBセルクローニング法
当社のシングルBセルクローニング法では、免疫マウスから取得した免疫細胞の中から、抗原特異的な抗体を発現しているB細胞をMBL独自の方法で染色し、セルソーティングにより1細胞ずつ分離します。単離したB細胞から抗体遺伝子を取得後、それらの抗体遺伝子を哺乳動物細胞に導入し、抗体を発現させます。そして、抗体の親和性や特異性を評価することで目的のモノクローナル抗体を選択します。
シングルBセルクローニング法の特徴
シングルBセルクローニング法は、ハイブリドーマ法のようなB細胞とミエローマの細胞融合操作を含まないため、長期間の選択培養を必要としません。また、細胞融合効率にも依存しないことから、短期間に多くの抗原特異的なB細胞を取得することができます。B細胞の抗体遺伝子配列を1細胞ごとに増幅するため、生体内で産生されるVHおよびVLペアとなる抗体遺伝子の取得が可能です。
- 短期間かつ効率的に抗原特異的な抗体の取得が可能!
- 生体内に存在するVHおよびVLペアとなる抗体を取得可能!
- 日本国内で実施し、柔軟な対応が可能!
シングルBセルクローニング法の対象動物種
マウス