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液性免疫と抗体(抗体のでき方)


遺伝子再編成

獲得免疫では、多種多様な病原体に対してそれぞれ特異的に反応できるT細胞やB細胞が同じく多数存在します。これは、多様な抗原受容体をもつT細胞やB細胞が存在しているためです。T細胞の抗原受容体をT細胞受容体(TCR)、B細胞の抗原受容体を免疫グロブリン(Ig)と呼びます。抗原受容体の多様性は「遺伝子の再編成」によって実現されています(図.遺伝子組換えによる免疫グロブリンの多様性)※1。遺伝子の再編成では、胸腺や骨髄でT細胞やB細胞が分化する過程で、それぞれの細胞の抗原受容体の遺伝子の切り貼りがおこなわれ、抗原受容体に膨大なレパートリーがつくられます。
※ 1 免疫グロブリン遺伝子の再編成メカニズムを解明した利根川進博士は 1987年のノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

遺伝子組換えによる免疫グロブリンの多様性

遺伝子組換えによる免疫グロブリンの多様性

免疫グロブリンは、2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)の計4本のポリペプチド鎖がS-S結合でつながれた分子で、抗原はアミノ酸配列に多様性がある可変領域(V領域)に結合します。H鎖可変領域(VH)の構造・配列は、たくさんあるV、D、Jの遺伝子群からそれぞれ1個の遺伝子が、L鎖可変領域(VL)は、V、Jの遺伝子群からそれぞれ1個の遺伝子が選ばれて再編成されます。TCRも、同じような仕組みで抗原認識部位の多様性が生み出されます。TCRは免疫グロブリンと異なり、抗原分子そのものに直接結合するのではなく、主要組織適合性複合体(MHC)分子上の抗原が分解されたペプチドを認識します。

免疫グロブリンの構造

免疫グロブリンの構造

自己反応性細胞の除去

遺伝子再編成によって、多種多様な抗原にそれぞれ特異的に反応する免疫細胞が生み出されますが、その中から、自己に対して反応してしまうような免疫細胞は、早期に排除されます。

T細胞の場合

胸腺上皮細胞の細胞表面には主要組織適合性複合体(MHC)が発現しており、そこには自己に由来するペプチド(自己抗原)が乗っています。このMHC と自己抗原の組み合わせに強く結合してしまうT細胞は、自己を攻撃する恐れがあり、アポトーシスで排除されるようにプログラムされています。逆に、MHCが認識できないT細胞はやがて死んでいきます。

B細胞の場合

B細胞もT細胞と同様に、自己反応性の恐れのあるものは分化の過程で排除されます。骨髄で、未熟なB細胞の受容体に周囲の細胞の表面分子や体液中の分子が強く結合すると、そのB細胞は死んでしまいます。結合がそれほど強くない場合は、もう一度遺伝子再編成がおこなわれます。このようにして、選別されたT細胞やB細胞は、胸腺や骨髄から出てリンパ節に運ばれます。

リンパ節での免疫細胞の出会い

リンパ管は、先端の閉じた管として組織中にはりめぐらされています。毛細血管からにじみだしてきた組織液はリンパ管壁の細胞の間を通ってリンパ管に流れ込みます。

リンパ液と血液の循環

リンパ液と血液の循環 リンパ管にも、弁が付いていて筋肉の運動によって体の中心に向かって流れるようになっています。リンパ液は、リンパ節のような二次リンパ器官※2に流れていきます。二次リンパ器官には、抗原を提示した樹状細胞も移動してきており、T細胞やB細胞などの免疫細胞が効率よく出会える仕組みになっています。

※2  二次リンパ器官にはリンパ節の他に、脾臓、腸管のバイエル板が含まれます。抗原がリンパの流れに乗ったものはリンパ節で、血液にはいったものは脾臓で、腸管にはいったものはパイエル板で捕捉されます。



リンパ節の構造

リンパ節の構造 樹状細胞は、輸入リンパ管を通ってリンパ節のT細胞領域に移動します。抗原特異的なT細胞が樹状細胞と出会い、活性化されるとエフェクター機能を持つようになります。エフェクター細胞となったキラーT細胞とヘルパーT 細胞の一部はリンパ節から出て胸管から血液に入り、組織に運ばれて機能を発揮します。
活性化した一部のヘルパーT細胞はT-B境界領域に移動します。抗原を捕捉したB細胞はT-B領域で、あるいは、高内皮細静脈を介してリンパ節に入り、T細胞領域を通る時に、T細胞と出会う機会を得ます。このとき、抗原を捕捉しているB細胞と、その抗原に特異的なT細胞がうまく出会うと、互いに活性化し合います。こうした相互作用の結果、さらに分化が進み、親和性の高い成熟した質の優れた抗体を産生するようになります。



リンパ節内でのリンパ球活性化

リンパ節内でのリンパ球の活性化
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