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腸管免疫とは?


腸管は最大の免疫器官

近年、免疫学において、最も注目されている分野の一つが「腸管免疫」です。腸管免疫の特徴として、「免疫細胞の数が多いこと(特にIgA産生細胞とCD4+細胞が重要な役割を果たします)」と、「感染症に対する防御のために免疫を活性化する一方、栄養成分を摂取するために腸内細菌や食物に対しては免疫を抑制すること」などが挙げられます。

腸管免疫

腸管免疫
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ヒトの腸管には、500種類以上、約100兆個の腸内細菌が生息し、消化されなかった食物繊維などを発酵によって代謝しています。腸内細菌は、一定の構成比を保った腸内細菌叢(腸内フローラ)を形成しており、「もう一つの臓器」と呼ばれることもあります。

最近の研究で、腸内細菌が、腸管における免疫系の成熟(T細胞の分化の完了)や、その機能維持に寄与していることが分かり、その詳細なメカニズムが明らかになってきています。例えば、マウスを使った実験では、腸内細菌の代謝産物の一つである酪酸が、制御性T細胞の分化誘導を促進していることが報告されています。酪酸には、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害作用があることが知られており、酪酸によって、未成熟なT細胞のDNAのうち、制御性T細胞への分化誘導に重要なFoxp3遺伝子領域のヒストンのアセチル化が促進され、遺伝子の発現がオンに切り替わることで制御性T細胞へと分化することが明らかになりました。消化管の慢性炎症であるクローン病や潰瘍性大腸炎は、近年の食生活の欧米化に伴って、日本でも患者数が毎年増加しています。これら炎症性腸疾患の患者の腸内フローラに異常が認められることから、自己免疫抗体検査と合わせて、腸内フローラを調べることによって、発症メカニズムの解明、治療法の確立が期待されています。

また、腸管の内壁に散在する M細胞は腸内の消化物から様々な物質を取り込み、粘膜直下の免疫細胞に渡す役割を担っています(図.腸管免疫)。M細胞の抗原伝達機構の解明や、経口摂取ワクチン(食べるワクチン)の開発が行われています。

 

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