Recombinant Afamin/Wnt3a

Wnt3aは腸管上皮細胞におけるLgr5陽性幹細胞の増殖維持に必須のニッチ成分であり、小腸、大腸、胃、膵臓、肝臓など様々な消化管オルガノイド等の作製に使用されています。
Recombinant Afamin/Wnt3aは、Wnt3aとAfaminの複合体リコンビナントタンパク質です。
Wnt3aとAfaminの複合体を形成することにより、高いWnt活性の維持を実現しました。

Recombinant Afamin/Wnt3a

特長

  • 安定したWnt3a活性
  • 無血清培地によるオルガノイド培養が可能
  • オルガノイドの長期培養の実現

Wntタンパク質の重要性

Wntシグナルは初期発生や幹細胞の維持と再生、がん化に関与していることが知られており、これらの増殖・維持に重要な役割を果たしています。特にWnt3aは腸管上皮細胞におけるLgr5陽性幹細胞の増殖維持に必須のニッチ成分であることが明らかとなり、小腸、大腸、胃、膵臓、肝臓など様々な消化管オルガノイドの作製に使用されています。

Afamin/Wnt3aについて

Wnt3aは、従来より消化管オルガノイドの培養に利用されていましたが、脂溶性タンパク質であるため無血清培養液中で凝集体を形成し、十分に活性を発揮できないことが課題でした。
Miharaらは、血清の構成成分の一つであるAfaminがWnt3aと複合体を形成することにより、高いWnt3a活性が維持できることを見出しました(PMID: 26902720)。また、 AfaminとWnt3aの複合体をオルガノイドの培養に使用することにより、オルガノイドの長期培養が可能となりました。

Afamin/Wnt3aコンプレックスの概要図

Afamin/Wnt3aコンプレックスの概要図

試験データ

Recombinant Afamin/Wnt3aによるLGR5陽性細胞の維持培養

Recombinant Afamin/Wnt3a及び競合A社のRecombinant Wnt3a存在下で、Lgr5プロモーターの制御下にtdTomatoを発現するオルガノイド株を培養しました。Recombinant Afamin/Wnt3aは低濃度でもLGR5陽性細胞を維持していることが確認できました。

出典:慶應義塾大学 医学部 医化学教室 佐藤俊朗教授との共同研究成果より

製品使用例

患者由来頭頸部癌オルガノイドの安定的な作製

データ提供:藤田医科大学 がん医療研究センター
渡辺崇先生、柳久乃先生、佐谷秀行先生


1:研究概要
がん細胞は治療抵抗性を有する一部のがん細胞と、がん組織の大部分を構成する通常のがん細胞に大別されます。治療抵抗性を有するがん細胞は幹細胞様の特性を有し、in vitroで通常組織の幹細胞が組織を形成する培養条件で、腫瘍オルガノイドを形成することが知られています。この腫瘍オルガノイドは元の患者腫瘍の不均一性や組織学的特性を維持しており、患者腫瘍を模倣する前臨床段階の研究モデルとして利用されています。
私共は藤田医科大学病院 耳鼻科・頭頸部外科との共同研究で、頭頸部癌患者の同意のもと手術検体に由来する腫瘍組織からがん細胞を単離し、頭頸部腫瘍(主に扁平上皮癌)オルガノイドを樹立しています。樹立した腫瘍オルガノイド(Patient Derived Organoid, PDO)を用いて、抗がん剤など薬剤感受性を解析するとともに、遺伝子変異、発現解析を行っています。頭頸部腫瘍オルガノイドの増殖には、EGFやFGFなど成長因子、アセチルシステインなど抗酸化物質を始め、幹細胞性を維持するためにWnt3aが必要とされています。

2:頭頸部癌オルガノイドの作製方法
患者由来頭頸部癌オルガノイドの樹立、培養については方法の一部を変更し、参考文献(PMID: 32929210)に従っています。論文中ではWnt3aを使用しておりませんが、我々はWnt3a CMあるいは、Recombinant Afamin/Wnt3aを添加して、オルガノイドの樹立と培養を行っています。

Driehuis E, et al, Nat Protoc (2020)[PMID: 32929210]

3:頭頸部癌オルガノイドの樹立に関する結果
私共はRecombinant Afamin/Wnt3aや自作したWnt3a CMを用いて頭頸部癌のオルガノイドを作製してきました。自作したCMを使用した際には、同じオルガノイドラインでもオルガノイド形成や増殖にばらつきが認められていました。しかしながら、Recombinant Afamin/Wnt3aを使用すると、オルガノイドの増殖や形成効率が一定になりました。この効果は継代を繰り返しても安定していました(図1)。

図1. 複数の頭頸部患者由来腫瘍組織からのオルガノイドの樹立例。HN04, HN06, HN13, HN14はそれぞれ、鼻腔癌、下顎歯肉癌、中咽頭癌、下咽頭癌(全て扁平上皮癌)に由来する腫瘍オルガノイド。

また、鼻腔癌検体(HN04)から樹立したオルガノイドは患者腫瘍や患者腫瘍組織移植モデル(Patient Derived Xenograft, PDX)と比較して同程度の角化が観察され、作製したオルガノイドは患者腫瘍の分化度、特性を維持していると考えられます(図2)。

図2. 患者由来鼻腔癌検体標本と移植モデル(PDX)およびオルガノイドの組織の比較。左から、患者標本、PDX、PDO切片のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色。患者腫瘍における角化(丸で囲んだ部分)の程度がPDX、PDOで類似しており、患者腫瘍の特性がPDXやPDOで保存されている。

4:Recombinant Afamin/Wnt3aを用いる利点の考察
自作したWnt3a CMを使用した際のオルガノイド形成や増殖のばらつきの原因は、1)Wnt3a CMの活性がロット間で異なること、2)Wnt3a CMに由来する血清成分など共雑物、3)不安定なWnt3a CM活性の影響が考えられました。一方、Recombinant Afamin/Wnt3aは無血清条件下で産生、さらに精製されているためにオルガノイドの形成や増殖が一定になったと予想されました。また、AfaminのWnt3aへの結合による安定したWnt3a活性も要因と考えられます。これらはWnt3a CMに比較して、Recombinant Afamin/Wnt3aの利点となります。

製品仕様

Code No.品名主要成分包装形態溶媒保存期間
J2-002 Recombinant Afamin/Wnt3a Mouse Wnt3a
Human Afamin
60 µg/300 µL 20 mM Tris-HCl (pH 7.4),
150 mM NaCl
ラベルに記載

関連製品

Afamin/Wnt3a CM

Afamin/Wnt3a CMはAfaminとWnt3aタンパク質を無血清培地中に共発現させたConditioned Mediumであり、無血清培地中で高いWnt3a活性が期待できます。

Code No.品名主要成分包装形態溶媒保存期間
J2-001 Afamin/Wnt3a CM Mouse Wnt3a
Human Afamin
10 mL Advanced
D-MEM/F-12
ラベルに記載

関連製品詳細ページ

本製品の使用に際して

オルガノイド等の培養において、本製品を他の因子との組合せで使用する場合、当該他の因子の使用等に第三者の特許が存在する可能性がございます。本製品は、他の因子との組合せによる使用等まで保証するものではございませんので、当該他の因子との組合せで使用する場合に関しては、ご所属の知財部・調査機関へご確認のうえ、本製品をご利用ください。

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参考文献

Afamin/Wnt3aの開発文献

  • Mihara E et al. Active and water-soluble form of lipidated Wnt protein is maintained by a serum glycoprotein afamin/α-albumin, Elife. 2016, 5:e11621. [PMID: 26902720]

Afamin/Wnt3a CMの使用文献

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