FGF-Max (Recombinant human FGF-1/FGF-2 chimera)

特長

  • 高い熱安定性
  • ユニバーサルFGFRリガンド
FGF-Max

FGF-Maxとは

線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor;FGF)ファミリーは、発生、分化、増殖、形態形成などさまざまな生命現象に関与する成長因子です。FGF-1~FGF-10 はFGF受容体(FGF receptor;FGFR)に結合することで細胞内へシグナルを伝達します。このFGF/FGFRシグナル伝達経路については過去からは多くの研究が報告されており、胚発生から成体のホメオスタシスまでの多くのプロセスに深く関与することが示唆されています。

FGF/FGFRシグナル伝達経路の活性化はオルガノイド培養においても重要であることが知られています。しかし、臓器タイプごとに異なるFGFRリガンドを適切に選択する必要があり煩雑性が否めませんでした。

そこで、どのタイプのFGFRとも親和性が高くユニバーサルなFGFRリガンドとして認識されているFGF-1を用いれば、オルガノイド培養をより簡便に実施できる可能性が期待されます。一方で、FGF-1は熱に対し不安定であることが知られており、細胞培養条件である37℃では、ヘパリン存在下においても6時間でその活性をほとんど消失します。そのため、市販されているFGF1の多くは通常の培養実験での使用に耐えられないことが課題でした。

そこで、このユニバーサルFGFRリガンドであるFGF-1に対して、熱安定性の改善を目的としてFGF-2とキメラ化したFGF-Maxを開発しました。

Ornitz DM, Itoh N. Wiley Interdiscip Rev Dev Biol. (2015)

試験データ

定量的ルシフェラーゼレポーターアッセイ

FGF-Maxの活性、および、安定性を評価するために、ルシフェラーゼレポーターアッセイ(SRE Reporter, Luciferase, HEK293 Cell Line:BPS Bioscience)を実施しました。

FGF-2との比較

FGF-MaxとFGF-2(競合他社品)をそれぞれ複数ポイントの濃度で細胞に添加し、6時間培養しました。その結果、両者は同等の生物活性を有していることが確認されました。

熱安定性評価

FGF-MaxとFGF-2(競合他社品)を37℃で24時間、48時間、72時間プレインキュベートした後に、それらを細胞に添加し生物活性評価を行いました。その結果、FGF-MaxはFGF-2と比べてプレインキュベート後も高い生物活性を維持し、熱安定性に優れていることが確認されました。

ヒト小腸オルガノイド培養

FGF-Max、FGF-2(競合他社品)存在下でヒト小腸オルガノイドを培養しました。FGF-Max存在下においてオルガノイド増殖能が高い傾向にあることが示唆されました。

ヒト小腸オルガノイドの分化の確認

FGF-Max(4 ng/mL)存在下で培養したヒト小腸オルガノイドをパネート細胞、内分泌細胞、杯細胞マーカーで染色しました。

オルガノイド内にパネート細胞および分化細胞である内分泌細胞、杯細胞が存在していることが確認できました。

マウス胃オルガノイドの樹立

FGF-Max、FGF-10(競合他社品)存在下でマウス胃オルガノイドを培養しました。ヒト小腸オルガノイドと同様に、FGF-Max存在下のオルガノイド増殖能が高い傾向にあることが示唆されました。

【ATPアッセイ】

ATPアッセイの結果においても、FGF-Max存在下のオルガノイド細胞能が高い傾向にあることが示唆されました。

マウス膵臓オルガノイドの樹立

FGF-Max、FGF-10(競合他社品)存在下でマウス膵臓オルガノイドを培養しました。上記と同じく、FGF-Max存在下のオルガノイド増殖能が高い傾向にあることが示唆されました。

【ATPアッセイ】

アッセイの結果においても、FGF-Max存在下のオルガノイド細胞能が高い傾向にあることが示唆されました。

患者由来癌および正常オルガノイド培養におけるFGF-Maxの影響

データ提供:関西医科大学 病理学講座
松浦 徹先生

患者由来膀胱癌及びその他患者由来オルガノイドの維持

関西医科大学では同一患者の癌組織と隣接正常組織からオルガノイドを培養し、癌と正常を合わせて20種類以上・250検体以上(1検体につき3チューブ以上)を保存しています。これらオルガノイドの基礎培地にはFGF-Maxを使用しており、良好な増殖を示しています(図1)。

図1. 関西医科大学KMUバイオバンクセンター保存の患者由来オルガノイド
培地にはFGF-Maxを添加。スケールバーは200 μm。その他、膵癌、筋肉腫、胃底腺ポリープ、正常胃、正常肝臓、上顎洞癌などの培養にも使用。

FGF-Maxを用いたオルガノイド培養液の活性安定性の評価

充分に成長した膀胱癌オルガノイドの培地中にFGF-MaxあるいはFGF-2(競合他社品)を添加し、その後培地交換なしで7日間培養を行い、オルガノイドの細胞生存維持への影響を比較しました。4日後ではFGF-Max添加培地とFGF-2添加培地の間に差はありませんでしたが、7日後ではFGF-Max添加培地の方が3倍以上の生存細胞が検出されました(図2)。この結果から、FGF-MaxはFGF-2に比べて培地中で長く活性が保たれることが示唆されました。上記の結果から、FGF-Maxを用いることで培地交換の頻度を減少させる効果を期待することができます。

図2. 培地交換なしにおける膀胱癌オルガノイド維持へのFGF-Maxの効果
左パネル:培地交換なし7日目のオルガノイド透過光画像。
右パネル:0、4、7日目の細胞生存量。細胞由来のATP量を定量することで生存細胞量を測定(プロメガ社CellTiter-Glo®使用)。
**p < 0.01, Student’s t-test.

製品仕様

Code No. 製品名 形状 包装
J2-003 FGF-Max (Recombinant human FGF-1/FGF-2 chimera) Lyophilized from 20 mM Tris-HCl (pH7.4) containing 0.5 M NaCl and 1% Trehalose. 50 µg

本製品の使用に際して

オルガノイド等の培養において、本製品を他の因子との組合せで使用する場合、当該他の因子の使用等に第三者の特許が存在する可能性がございます。本製品は、他の因子との組合せによる使用等まで保証するものではございませんので、当該他の因子との組合せで使用する場合に関しては、ご所属の知財部・調査機関へご確認のうえ、本製品をご利用ください。

カタログ情報

FGF-Maxパンフレット