腸管オルガノイド

2009年に佐藤らによってマウス小腸のオルガノイド培養の成功が報告されて以降、マウス大腸、ヒト小腸、大腸のオルガノイド培養の培養方法が確立されています。また現在では、腸管オルガノイドは、基礎、疾患、創薬研究から、再生医療・移植医療といった応用研究にも活用されています。

ニッチによる幹細胞の自己複製と未分化能

長期間にわたる自己複製能と未分化能(全ての細胞へ分化する能力)を合わせもつ腸管上皮幹細胞の維持には、ニッチと呼ばれる特殊な微小環境が必須です。この幹細胞を調節する微小環境からの外的シグナルは、大きく3つ挙げられます。1つは間質細胞等からの液性因子、次に足場としてのECM、そして隣接する娘細胞との直接的なcell-cell contactです。

オルガノイド培養

in vitroにおいても、微小環境・幹細胞ニッチを模倣した環境を再構築することで腸管上皮幹細胞を維持し、自己複製能と多分化能をもったオルガノイドが形成できます。ニッチを模倣した環境下で培養された腸管オルガノイドのクリプトには、生体と同様に、幹細胞と分化細胞の杯細胞、内分泌細胞などの形成が確認できます。


オルガノイド培養において、微小環境・幹細胞ニッチを模倣するため、足場としてマトリゲル(コーニング社)が広く利用されています。また、幹細胞の分化を制御するWntシグナル、Notchシグナル、EGFシグナル、BMPシグナルに作用するニッチ因子などはオルガノイド培養培地に添加して利用されています。