ヒト多能性幹細胞の維持には、さまざまな標準合成培地が使用されますが、近年、ノースウェスタン大学の Paul BurridgeらがウイークエンドフリーなB8培地を開発しました1。このB8培地には、マサリク大学とEnantis社のDvorakらが開発した熱安定性FGF-2(FGF2-G3)が使われています。
ヒト多能性幹細胞における多能性維持の条件を検討した研究論文には、複数の培地組成が記載されており(代表例を表1に示します)、いずれの組成でも概して3つの主要なシグナル伝達経路を標的にしています1。
表1.一般的なヒト多能性幹細胞の維持培養用培地の組成が記載されている論文紹介
培地名 | 構成成分 | 出典 |
---|---|---|
mTeSR1 | DMEM/F12, BSA, FGF-2, TGF-β1, insulin, transferrin, cholesterol, lipids, pipecolic acid, GABA, b-mercaptoethanol | Ludwig et al. 20062 |
E8 | DMEM/F12, FGF-2, TGF-β1, insulin, transferrin, selenium, ascorbic acid | Beers et al. 20123 |
DC-HAIF | DMEM/F12, BSA, FGF-2, TGF-β1, Activin A, IGF-1 LR3, NRG-1(neuregulin beta 1), transferrin | Wang et al. 20074 |
B8 | DMEM/F12, FGF2-G3(FGF2-STAB®), TGF-β3 / TGF-β1, NRG-1(neuregulin beta 1), insulin/IGF-1 LR3, ascorbic acid, transferrin, sodium selenite, sodium bicarbonate | Lyra-Leite et al. 20215 |
TGF-β1は、E8タイプのiPSCおよびESC用培地に広く使用されています。
Qkine社のTGF-β1 PLUSは、幹細胞の多能性維持における再現性が高く、Chemically definedな幹細胞用培地に対応可能な、市場初の完全アニマルフリーのヒトトランスフォーミング増殖因子β1 (TGF-β1) リコンビナントタンパク質です。
TGF-β1 PLUSは、最適化された成熟ドメインを含む、高純度の24 kDa二量体のアニマルフリー、キャリアタンパク質フリーのリコンビナントタンパク質です。TGF-β1 PLUSは、幹細胞バイオテクノロジーのスペシャリストである英国ケンブリッジのStemnovate社が、iPSCの多能性維持に関して広範囲に検証しています。
TGF-β1 PLUS(QK010)の製品紹介
Qkine社は、2016年にケンブリッジ大学のMarko Hyvönen博士の研究室から独立し設立されました。
Marko Hyvönen博士の研究室で開発された独自の製造プロセスとタンパク質工学技術を組み合わせて、生物活性を有する高純度のアニマルフリーのリコンビナントタンパク質を製造しています。
Qkine社は、動物由来成分フリー(ADCF)ラボで製造し、非常に厳格で堅牢な品質管理基準に合格したリコンビナントタンパク質製品を提供することにより、幹細胞、細胞小器官、再生医療分野の研究開発をサポートしています。