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Keima-Redによるマイトファジーの検出


マイトファジーマイトファジーとは、オートファジーを介したミトコンドリアの選択的分解機構であり、古くなったミトコンドリアの代謝に関与しているとされます。この機構によって、ミトコンドリア機能障害が関与する疾患から生体を防御していると考えられています。 マイトファジーの実行においては、パーキンソン病の原因遺伝子として知られているParkin(ユビキチンリガーゼ)が重要な役割を果たしています。 ミトコンドリアが脱分極し不良化すると、Parkinはその外膜上に集積します。その後、Parkinのユビキチンリガーゼ活性により不良ミトコンドリアの外膜にユビキチンが付与され、このユビキチンが認識されることによりマイトファジーが実行される、と考えられています。

マイトファジ−活性モニタリング原理と解析方法

こうしたマイトファジーの研究ツールとして、下記にご紹介致します蛍光タンパク質Kiema-Redは、励起スペクトルがpH により変化します。中性環境下では短波長側(440 nm)優勢ですが、酸性環境下では長波長側(586 nm)優勢です。この2つの励起波長による画像データから得られるRatio(586 nm/440 nm)画像で観察すると、中性環境下のKeimaは、Ratio値は低くなり、青色で表示されます。一方、酸性環境下にあるKeimaでは、Ratio値は高くなり、赤色で表示されます。

モニタリング原理

Keima-Redによるマイトファジ−活性モニタリング原理

解析方法

解析方法

本アプリケーションでは、これらの性質を利用し、MT-mKeima-Red(ミトコンドリア局在シグナルペプチド配列を付加したKeima)とParkinとを目的の細胞に強制発現させ、薬剤処理等の前後で観察される蛍光の波長の違いにより、マイトファジーを検出・可視化しました。
マイトファジーの誘導データ

ミトコンドリアの膜電位に影響を与える薬剤CCCP、oligomycinの投与によりマイトファジー誘導を行い、586 nm/440 nmのRatio画像(A", B", C")で観察しました。
マイトファジー誘導により、ミトコンドリアに局在しているMT-mKeima-Redは、Ratio画像で赤色に表示され、酸性環境下に局在することが示されました(B→B")。その後に、中和剤であるNH4Clを投与し、細胞全体を強制的に中性環境にすると、青色に戻りました(C→C")。
この結果は、マイトファジーの進行により、ミトコンドリアが酸性環境下のリソソーム内に取り込まれる、という知見と一致します。

Keima-Redによるマイトファジーの検出実験の概略

使用文献情報

  • Katayama H et al. A sensitive and quantitative technique for detecting autophagic events based on lysosomal delivery. Chem Biol. 18, 1042-52 (2011) [PMID: 21867919]
  • Choubey V et al. BECN1 is involved in the initiation of mitophagy: It facilitates PARK2 translocation to mitochondria. Autophagy 10, 1105–19 (2014). [PMID: 24879156]
  • Safiulina D & Kaasik A. Energetic and Dynamic: How Mitochondria Meet Neuronal Energy Demands. PLoS Biol 11, e1001755 (2013). [PMID: 24391475]
  • Togashi K et al. Na+/H+ Exchangers Induce Autophagy in Neurons and Inhibit Polyglutamine-Induced Aggregate Formation. PLoS ONE 8, e81313 (2013). [PMID: 24278418]
  • Narendra DP et al. PINK1 rendered temperature sensitive by disease-associated and engineered mutations. Hum Mol Genet. 22, 2572-89. (2013). [PMID: 23459931]
  • Bingol B et al. The mitochondrial deubiquitinase USP30 opposes parkin- mediated mitophagy. Nature 510, 370–5 (2014). [PMID: 24896179]



pMitophagy Keima-Red mPark2

本製品は蛍光タンパク質Keima-Red(単量体、蛍光ピークは620 nm)のミトコンドリア標識用プラスミドです。 ミトコンドリア局在シグナルペプチド配列を付加したKeima-Red と、マイトファジーの実行において重要な役割を果たすParkin(ユビキチンリガーゼ)を目的の細胞に強制発現させ、薬剤処理等の前後での励起波長の変化により、マイトファジーを検出・可視化しました。

従来品との違い

単一コンストラクトでMT-mKeima-Red とParkin を発現

pMitophagy Keima-Red mPark2のコンストラクト

これまでミトコンドリア局在mKeima-Red(MT-mKeima-Red)と別の発現コンストラクトとして共導入されてきたParkin (Park2)を、IRES制御下において単一のコンストラクトからバイシストロニックに発現するようにしました。これにより手法が簡便化され、イメージング解析及び定量解析の利便性が向上しました。また、IN Cell Analyzerを用いたHCA (High content analysis)においても本系が使用可能であることを確認しています。


IN Cell Analyzer 1000 による解析例

創薬スクリーニングにも使用できる安定した系の構築が可能です。

pMitophagy Keima-Red mPark2を用いたIN Cell Analyzer 1000 によるHCA

Ratio イメージング

Ratio (586/440)は、Ex. 550/ Ex. 440比の高(オレンジ)低(紫)を示します。Ratioが高いほど、マイトファジーが亢進しています。

pMitophagy Keima-Red mPark2を用いたRatio イメージング

定量解析

マイトファジ−の定量解析

■ 安定発現株 (HeLa 細胞 )
Parkin(+): MT-mKeima-Red-IRES-Park2 を導入
Parkin(-): MT-mKeima-Red を導入

■ アッセイ方法
細胞に CCCP (10 µM) あるいは DMSO を添加し、24 時間後に観察。

■ フィルターセット
440 nm (Ex: 440AF21, Em: 610ALP, DM: 590DRLP)
586 nm (Ex: 550DF30, Em: 610ALP, DM: 590DRLP)


既承認薬ライブラリーを用いたマイトファジー誘導剤のハイスループットスクリーニング(HTS)

既承認薬ライブラリーを用いたマイトファジー誘導剤のハイスループットスクリーニング
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既承認薬ライブラリー640 剤に対して、マイトファジーを誘導する効果があるか、ハイスループットスクリーニング(HTS)を行った。ポジコンとして、CCCP(10 μM)を各プレートにおいて測定。1薬剤について、 10 μg/mL 、
2 μg/mL の濃度で各々4 回(N=4:different fi elds of the same well)測定を行った。

HTSの矢印(4薬剤がヒット)

Dose-responseassayの結果、濃度依存的なマイトファジーの亢進が確認された
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HTSの結果、マイトファジーやオートファジーとの関連が報告されている複数の化合物がヒットした。
ヒットした4種類の化合物について、Dose-responseassayを実施した結果、濃度依存的なマイトファジーの亢進が確認された。