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リン酸化p62について


神経変性疾患やがんの研究で注目

p62は様々な部位がリン酸化されることが明らかとなり、それぞれの部位のリン酸化が連続的に起きることで選択的オートファジーなどの生体防御に関わっています。p62 のSer407(ヒト)/Ser409(マウス)のリン酸化に続き、Ser403(ヒト)/Ser405(マウス)がリン酸化されると、ポリユビキチン鎖との親和性が上昇します。これにより、ユビキチン化された異常なタンパク質の凝集体、脱分極したミトコンドリア、また細胞内に侵入したバクテリアなどがリン酸化p62 によって捕捉されます。
さらにmTORC1によってSer349(ヒト)/Ser351(マウス)がリン酸化されると、p62とKeap1との親和性が増し、Nrf2がKeap1から離れて核に移行できるようになります(p62-Keap1-Nrf2経路)。ストレス応答転写因子として知られるNrf2は様々なストレス耐性遺伝子の発現を亢進させます。このときp62の遺伝子発現も誘導されることでポジティブフィードバック機構が働きます。一方、Keap1と結合したリン酸化p62は、LIR(LC3 Interacting Region)を介してLC3と相互作用することでオートファジー経路にて分解されます。このようにストレス下にある細胞は、p62のリン酸化を介して2つの生体防御システムを連動させることで効率的に悪環境を乗り越えていると考えられます。
選択的オートファジーの破綻は様々な疾患と関連します。たとえば家族性パーキンソン病の神経細胞では、タンパク質の凝集体や脱分極したミトコンドリアの除去が上手くゆかず、神経細胞がダメ―ジを受けて脳の機能が低下します。また肝細胞がんでは恒常的にp62のSer349がリン酸化され、Nrf2が持続的に活性化しています。したがって、p62のリン酸化やリン酸化p62とKeap1との相互作用を阻害する薬剤が新しいがんの治療薬になることが期待されています(参考文献: Saito, T., et al., Nat. Commun. 7, 12030 (2016) PMID: 27345495)。

■ p62-Keap1-Nrf2経路
p62-Keap1-Nrf2経路
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