MBLではこれまで、抗原特異的なT細胞を検出するためのツールとして、数多くのMHCテトラマー製品を開発・製造してまいりました。MHCテトラマー製品は、基礎研究分野あるいは臨床試験において、T細胞免疫応答のモニタリングできるツールとして活躍してきました。
このたびMBLでは、MHCが認識するT細胞受容体(TCR)を4量体化したTCRテトラマー試薬を効率よく取得する方法を開発し、製品化に成功しました。開発した2種類のがん抗原(Survivin-2B, PBF)特異的なTCRテトラマー試薬※は、フローサイトメトリーにて、細胞を用いた染色性の確認も行っています。
※これらの製品は特開2017-169566「T細胞レセプターとその利用」の実施許諾を受けて販売しています。
ご希望のTCRテトラマー試薬をカスタムで作製することもできます。詳しくはお問い合わせください。
TCRテトラマーとは?
抗原特異的T細胞受容体(TCR)を、蛍光標識のついたストレプトアビジンを用いて4量体化したものです。
作製過程の概略を下図に示しました。
大腸菌リコンビナント蛋白質のTCR α鎖、β鎖をそれぞれ発現させ、2つを混ぜてリフォールディング操作を行い、可溶性のTCRモノマーを形成させます。β鎖のC末端にはビオチンが付加された状態で発現されるため、得られたTCRモノマーのβ鎖のC末端にはビオチンが付いています。
ビオチン化TCRモノマーは、蛍光標識したストレプトアビジンと混合することで4量体化させ、TCRテトラマー試薬となります。
MHC Tetramer | TCR Tetramer | |
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構成 | ペプチド-MHC複合体 | TCR (α鎖/β鎖) |
認識する分子 | 抗原特異的TCR | ペプチド-MHC複合体 |
検出可能な細胞 | 抗原特異的T細胞 | がん細胞、抗原提示細胞など |
アプリケーション | ・フローサイトメトリーによる定量 ・抗原特異的T細胞のモニタリング |
・フローサイトメトリーによる定量 ・がん免疫療法の有効性検討 ・がんワクチンの品質管理 |
HLA-Aを欠損したC1R細胞にHLA-A*24:02を安定発現させた細胞株(C1R-A24)に、Survivin-2Bペプチド(AYACNTSTL)を添加して4時間パルスしたものとパルスしない細胞を用意します。PE標識Survivin-2B TCRテトラマーとAnti-HLA-A24 (Human) mAb-FITC(Code No. K0209-4)を用いて細胞染色し、フローサイトメトリーで解析しました。
ペプチドパルスした細胞では、HLA-A24陽性細胞中96.42%のTCRテトラマー陽性細胞を得ることができました。
%:HLA-A24陽性細胞中のテトラマー陽性細胞率を示す
HLA-A*24:02 survivin-2B(AYACNTSTL)のペプチド/MHC(pMHC)モノマーを磁性ストレプトアビジンビーズと反応させました。pMHCモノマーの希釈率を1~10-3倍に変化させたものを用意し、表面の発現量の差を再現しました。
MHCの結合量が異なるこれらのビーズをSurvivin-2B TCRテトラマーを用いて染色を行い、フローサイトメトリーで解析しました。テトラマー陽性数をヒストグラムで表しました。ネガティブコントロールとしてMHCを結合していないビーズを用いました(R=0)。TCRテトラマーはビーズ表面のMHC数依存的に、強い反応性を示しました。