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RNA修飾とは?


RNA修飾とは

RNA配列中の一部の塩基やリボースは、転写後にメチル化などの化学修飾を受けています。RNA修飾の種類は豊富で、真核生物では130種類以上同定されています。その多くはtRNAで見つかっていて、tRNAの安定性や翻訳効率に影響を及ぼすことが知られています。その他、rRNAやmRNA、ncRNAにも修飾ヌクレオシドの存在が報告されました。これらの修飾状態の変化が及ぼす遺伝子発現制御や生物学的な現象への影響が注目されています。

m6A

N6-メチルアデノシン (m6A) は、真核生物のmRNAやlncRNAに豊富に存在する修飾ヌクレオシドです。スプライシングやRNA分解、翻訳と遺伝子発現制御に広く影響を及ぼすことが知られています。その他、rRNA、tRNA、snRNA、snoRNAでもm6Aの存在が報告されています。m6A修飾は、可逆的な反応で、ヒトではMETTL3を介してアデノシンからメチル化されてm6Aへと変換されます。一方で、FTOやALKBH5の活性亢進に伴い脱メチル化されて元の基本ヌクレオシドであるアデノシンへと変換されます。近年、m6A修飾と疾患や概日リズムとの関連が示唆されており、注目度が高まっています。また、脱メチル化酵素であるFTOも肥満や脳形成異常、発育遅延と関係していることが報告されており、脱メチル化の重要性も研究されています。

RNA修飾

m7G cap

真核生物において、RNAポリメラーゼⅡの転写産物であるmRNAや一部のncRNAの5’末端には、5’-Capと呼ばれる特徴的な構造があります。5’末端に、7位のグアノシンがメチル化された7-methylguanosine (m7G)が、5’-5三リン酸結合により転写産物の最初のヌクレオチドと結合しているため、m7G(5’)ppp(5’)N、すなわち、m7G capとも呼ばれます。
この特殊な構造のお蔭で、RNAはヌクレアーゼによる分解を免れます。さらに、5’-cap結合タンパク質により細胞質への輸送や翻訳が促進されます。

Inosine

RNA鎖中のアデノシンはADARによって脱アミノ化されイノシンへと変換されることが分かっています。これはA-to-I エディティングと呼ばれる現象です。イノシンはその化学構造上グアノシンに類似しておりシチジンと塩基対の形成が可能なため、mRNAのcoding region でA-to-I エディティングが生じる場合、tRNA中のアンチコドンが本来のワトソン・クリックモデル塩基であるウリジン以外でもゆらぎ塩基対 (wobble base pair) を形成してしまい、コドン中のアデノシンがグアノシンに変化した状態で翻訳されてタンパク質中のアミノ酸配列が変わってしまう要因になります。一方、miRNAの前駆体がA-to-Iエディティングされるとその成熟プロセスに影響を及ぼし、mRNA上のターゲットサイトが変化します。これらの機能が正常に働かない場合、神経疾患やがんなどの様々な疾患の原因となってしまいます。他にも、RNA修飾を可逆的に起こすことで複雑な生理機能の調節を可能にしている例があります。



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