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キチナーゼ様タンパク質



Chitinase

Chitinase関連分子とその機能・関連疾患

キチン(Chitin)はN-アセチル-D-グルコサミンがβ1→4結合したバイオポリマーで、節足動物や線虫、真菌をはじめとする様々な生物の外骨格や細胞壁の主成分となっています。しかしながら、脊椎動物での存在は確認されていません。

一方、キチンをオリゴマーに分解する酵素である「キチナーゼ (Chitinase)」は、脊椎動物を含む様々な生物に幅広く存在しており、哺乳類では、現在、2種類のキチナーゼが同定されています。一つは、マクロファージが産生するChitotriosidaseで、もう一つは主に胃から分泌されるAcidic mammalian chitinase (AMCase)です。これらは、病原体に対する生体防御や餌として取り込まれたキチンを含む動植物の消化・吸収に関与していると考えられています。これらの哺乳類における活性のあるキチナーゼは、キチン含有生物に対するバリアを形成するために進化した可能性があると言われています。

また、哺乳類には、活性をもたないキチナーゼ様タンパク質が存在し、これまでに7種類以上が見つかっています。これらキチナーゼ様タンパク質は、特定の糖鎖を認識する内因性レクチンとして働き、細胞の接着・移動、分化・増殖を調節していることが示唆されています。 これらのキチナーゼファミリータンパク質の多くが、関節炎、アレルギー、好酸球増多症を伴う寄生虫感染に関連して発見・同定されており、様々な病態と強く相関することが明らかにされていることから、病態を把握するための良いバイオマーカーとして注目されつつあります。

Chitotriosidase ELISA Kit and Chitotriosidase Fluorometric Assay Kit

Chitotriosidase

キチン分解酵素として知られるキトトリオシダーゼは、種々の疾患で検出されますが、元々はライソゾーム病の一種であるゴーシェ病で発見されました。ゴーシェ病の特徴として、様々な臓器において活性化マクロファージの集積が確認され、キトトリオシダーゼ活性はこのマクロファージに由来します。アテローム性動脈硬化症でも、血清キトトリオシダーゼが上昇します。この酵素活性は、動脈硬化層の血管内皮下に浸潤した脂質蓄積マクロファージの活性化と関連しています。

CircuLex Human Chitotriosidase ELISA Kit
CycLex® Chitotriosidase Fluorometric Assay Kit



Acidic Mammalian Chitinase Fluorometric Assay Kit(販売終了)

糖加水分解酵素ファミリーは非常に大きく、100以上のメンバーから成っています。EC3.2.1.14に分類されるグリコヒドロ-18ファミリーのメンバーであるAcidic mammalian chitinase (AMCase) とChitotriosidase-1は酵素活性のある真のキチナーゼです。哺乳類ではこれら2つの酵素のみがキトデキストリンとキチン中のN-アセチル-β-D-グルコサミン(1->4)-β結合を切断することができます。このファミリーの他のメンバーには、キチナーゼ様分子、例えばYKL-40 (Chitinase-3-like-1)とYKL-39 (Chitinase-3-like-2) などがあり、それらはキチンを加水分解する能力を欠いていますが、キチン結合活性は保持しており、結合組織タンパク質や前初期遺伝子産物のように機能しています。

AMCaseは酸性条件下で活性がある酵素としてクローニングされました。消化管に高度に発現しており、ヒトとマウス両方の肺および肺胞マクロファージにも、程度は低いものの発現しており、pH4-5が最適で最大活性を示します。AMCaseはChitotriosidase-1と同様に、キチン結合ドメイン、ヒンジ部位、39 kDaの触媒ドメインから成る、50 kDaのタンパク質です。これらの2つの酵素は下等生物のキチナーゼとかなりの相同性を示します。AMCaseはTh2依存性炎症に関与する重要なタンパク質の一つであり、IL-13の下流経路に影響を与えることによって、喘息やアレルギー疾患に関与しています。マウス喘息モデルにおいて、AMCase活性を阻害することにより、気道の炎症と過敏反応が減少します。このことは、AMCase活性は、喘息におけるTh2サイトカイン依存性炎症応答機構の一部を担っていることを示唆しています。



YKL-39 ELISA Kit

YKL-39は、chitinase 3-like 2とも呼ばれ、Glyco_18ドメインを持つ分泌性キチナーゼ様タンパク質であり、キチナーゼ触媒活性はないが、レクチン様の性質があります。最も近縁のホモログのYKL-40とは異なり、YKL-39は糖タンパク質ではありません。YKL-39は関節の軟骨細胞と滑膜細胞によって分泌され、ヒト胎児腎臓細胞において、シグナル調節キナーゼであるERK1/ERK2を活性化します。YKL-39レベルの増加は、変形性関節症(OA)または関節リウマチ(RA)患者の滑液中ばかりでなく、悪性腫瘍、特に神経膠芽腫において観察されています。YKL-39は現在、軟骨細胞の活性化とヒト変形性関節症の病態進行のバイオマーカーとして認められています。更に、YKL-39に対する自己抗体は、RA患者の8〜11.8%、およびOA患者の11.1%で検出されていますが、一方、YKL-40に対する自己抗体はRA患者のうち1%だけにしか検出されていません。

Th2サイトカインであるIL-4およびTGF-βの存在下において単球由来のマクロファージが成熟しますと、大量のYKL-39を発現するようになります。したがって、慢性炎症時に観察されるYKL-39レベルの上昇は、軟骨細胞のみに起因しているわけではありません。YKL-39は軟骨細胞特異的活性化だけではなく、腫瘍、アテローム性動脈硬化症やアルツハイマー病を含む神経変性疾患におけるマクロファージ特異的な応答を検出するための有用なバイオマーカーとして提案されています。

CircuLex Human YKL-39 ELISA Kit



YKL-40 ELISA Kit

YKL-40は、CHI3L1 (chitinase 3-like 1)またはhuman cartilage glycoprotein-39とも呼ばれ、哺乳類キチナーゼ様タンパク質ファミリーのメンバーであり、進化的に高度に保存されたタンパク質です。YKL-40は神経膠芽腫、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、骨肉腫、悪性黒色腫などの異なる起源の多数のヒト癌細胞株やマクロファージと好中球により体外に分泌されます。 YKL-40は、細胞の増殖と分化、血管新生、炎症、細胞外マトリックスのリモデリング、及び先天性免疫応答などに重要な役割を担っています。このタンパク質は細胞をアポトーシスから保護します。
血漿YKL-40濃度は、虚血性心血管疾患、癌、糖尿病、喘息、慢性閉塞性肺疾患、関節リウマチ、変形性関節症、アテローム性動脈硬化症、炎症性腸疾患、肺炎、肝線維症などの炎症や継続的な組織再構築を特徴とする疾患の患者で増加します。そして、血漿YKL-40濃度は疾患活動性と相関します。

CircuLex Human YKL-40 ELISA Kit
CircuLex Human YKL-40 ELISA Kit High Sensitivity Version



Chitinase関連試薬